気がつくと僕は寝ていた
いや、寝かされていたのかもしれない
夕べはいろいろありすぎた
突然現れた女の人、それと戦うゴウさん
それと・・・
ロイはいてもたってもいられなくなった
「ミルさん・・・!」
重い体を起こすと、隣にも寝かされている人が居るのに気がついた
長くて空色の髪、ゴウさんだ
「よぉ、起きたか」
「クロウドさん・・・」
部屋の入り口に居たのはこの村一の力持ちであり、
非常に頼れる元兵士のクロウド・ウォーレンだった
「まだ寝てな。お前、相当疲れてたみたいだからな」
「大丈夫です。そんなことよりミルさんは・・・」
普段おおらかなクロウドの表情が曇った
うつむいた視線には大きな哀れみがある
「そんな・・・まさか本当に・・・」
「残念だが、治療もできる状態じゃなかった」
一気に目頭が熱くなった
ミルヒ・ワイガーはこの村でも結構な人気者だった
いくらかひねくれてはいるものの、根は優しく、明るい人物だった
警備をしているメンバーをクロウドと一緒に盛り上げてくれていた
そんなミルヒをロイは尊敬していた
別れた兄にそっくりだったのだ
彼にとってミルヒは兄のような存在だった
「畜生! 俺がヘマしてなけりゃ・・・!」
大男が固めた拳を壁に叩きつけた
そうだ、悲しいのはみんな一緒なんだ
それに、僕より先にここに来ていて、
ミルさんとは長い付き合いだったクロウドさんはなおさらだ
「・・・レイドさんたちは?」
沈みかけた空気を破るために何とか口を開いた
「今は門の調査をしている。ミルを殺ったやつはあいつらの敵でもあるらしい」
ロイは一瞬だけ思った
レイドさんたちが来たせいでミルさんは殺された
しかし、その考えはすぐに打ち消された
まだレイドさんたちが悪いとは言い切れない
なぜ命を狙われているのかはっきりしないと断定はできない
決めた
彼は友人の仇を討つために寝具から降り、部屋を出た
「こりゃひでぇ・・・」
「あぁ、まったくだ」
レイドとディンは血まみれになった門を調査していた
門番をしていた男・・・今回の犠牲者であるミルヒ・ワイガーはなかなか人気のある男だったらしい
その情報はなおさら彼の怒りを倍増させた
俺が何をした? なぜ命を狙われる?
なぜまったく関係のない人間を犠牲にしてまで俺を始末しようとするんだ?
「今は深く考えなくていい。とりあえずお前は戻っていいぞ」
「は? 何でだよおっさん」
ディンは照れくさそうに頭をかいた
「いやな、元とはいえ保護者の身としてお前にあまりこういうところに居てほしくないんだよな」
「俺に銃器やらの技術を叩き込んだ戦闘バカがいまさら何を言う」
「ハッハッハ、言うようになったな
だがまあ、どちにしろお前は戻ってあの女性のことでも訊いて来い」
「ん? そういやそうだった。名前ぐらいきいてくるか」
「ああ、そうしろ」
ディンの表情には何か複雑なものがあったが、うまく読み取れなかった
それもそうだ。読心術なんか心得ちゃ居ない
レイドは赤く染まった門を後にし、日照りにさらされる小さな家に向かった
村の広場はこの時間帯だととても暑い
汗を片手でぬぐいながらレイドは自分が泊まった宿の前に居た
「あ、レイドさん」
「おぉ、ロイだっけ? ゴウはどんな感じだ?」
「まだ目はさめません・・・あの・・・一つきいていいですか?」
「何だ?」
「レイドさんたちは・・・なんで狙われているんですか?」
いやな顔をされることを覚悟で質問したが、
驚いたことにレイドはうなっただけだった
「それが分からんのよ。何か突然襲ってくるし
何にもした覚えないんだけどな・・・」
ロイはとりあえず安心した
レイドさんたちが悪いわけではなさそうだ
彼らの第一印象で悪い人ではないというイメージが強く付き、いくらか気に入ってもいた
「最近分からないことだらけでよ、頭が混乱しまくりだぜ」
話していると、目の前の家のドアが開いた
出てきたのはレイドさんたちと一緒に居た女性だった
最初は夜でよく見えなかったが、かなり若い
大人であることは間違いないが
「あ・・・おはようございます」
「お、ちょうどよかった。名前ぐらいきいておこうと思ってさ」
「名前・・・ですか」
「そ、名前」
ロイは気付いていた
女性が何かしらためらっていることに
「私は・・・私はシリア、シリア・ラークラムです」
「!? ラー・・・?」
別れと出会いが交差した村、その村に名はなかった
第二十五話へ続く・・・・・