一刻も早くベッドから飛び出してゴウを助けに行きたい
だが、体が言うことを聞かない
ったく! なんなんだよこれは!
イライラと不安が降り積もるなか、ライが話し掛けてきた
(ドウヤラサッキノモゴッドブレードノイッシュノヨウダナ)
種類ってあるモンなのか?
しかし、そんなことよりも・・・・
彼はゴウのことで頭がいっぱいだった
幼くして親元を離れた彼の、初めてであり、
ついこの間までは唯一の友人であった
いまや友人という表現よりも、
家族、兄弟といったほうがふさわしい
もうゴウと出会ってから10年近くだ
そんなことを考えて、ゴウを信じようとし続けたが、
この目で無事な姿を見ないと不安が募るばかりだ
こんな・・・・この程度の疲労で・・・・大切な人を失うわけには・・・・
そうだ!いいものがあったじゃないか!
ゴウは、何かしら医療品を作っていた・・・
その中に回復薬もあったはずだ・・・!
回復薬さえ手に入れば・・・・
「ユリア・・・・いるか?」
カウンターに座っていたユリアが、その絞りだすような声に気づき、
こちらに注意を向けた
「地下室に・・・ゴウの荷物がある・・・
そのなかに『Q』と書かれたビンがあるはずだ・・・
もって・・・来てくれ・・・」
思ったより体が重い
一言しゃべるたびに眠気が増してゆく
しかし、ゴウとの友情はその程度の眠気に負けるほど軽いものではなかった
「わかった・・・・」
ユリアも不安げな顔をしている
しかも・・・・
泣いていたのか? 目が赤い
いや、どうでもいい
少しして、ユリアが地下から目当てのものを持ってきた
「これ?」
「そうだ・・・それがあれば・・・・ゴウを助けに・・・・」
もう言葉を出すのもやっとになってしまった
早く、それを・・・・
「どうすればいいの?」
「み・・水・・・混ぜて・・・の・・飲む・・・」
早く・・・まずい・・このままでは・・
「わかった、まってて!」
少しして、ユリアが救いの水をカップに入れて持ってきた
やっとのことで手に取ると、少しずつ、加速しながら飲み干した
後は少し待つだけだ・・・
そのままレイドは眠りに落ちていった
俺は死んだ。唯一の親友を残して
呪文のように頭の中で唱えつづけていたゴウも、
次の瞬間に明らかな人間の殺気を感じた時には、まだ生きていると感じた
寝ている状態から横転し、そのまま床に着地した
その衝撃で、刺すような痛みを胸に感じ、うめき声を上げた
いや、実際刺されたんだ
「ハァ・・・ようやく目覚めたか・・・」
ゴウを殺そうとしたその男は、
縮れた長め黒いの髪と、あからさまに暗い顔をしている、長身な青年だった
「お前は・・・誰だ?」
痛みに耐えながらも、威嚇の体制をとりつつ質問する
「君はこの森のど真ん中で倒れてたんだよ・・・
あの出血で生きてるとはね・・・」
やはりあれは本当だったのか
服はそのままだが、
傷の部分が包帯で巻きつけてある
どうやらここはこいつの家で、
こいつは俺を助けてくれたようだ
だが、さっき感じた殺気はなんだ?
「僕は・・・僕はネガティー
君が目覚めないからもう死んでるんじゃないかと思ってね・・・
死体を置いておくよりはそこらに埋めておくほうがいいかと思ったんだけど、
・・・生きてたんだね・・・」
「お前は何がしたいんだ?」
ネガティーと名乗る青年は喋る前に必ずため息をつく
どうやらいつぞやの太陽男とは正反対のようだ
「ただ薬草を取りに来ただけなのに、まさか怪我人を見つけるとは・・・
めんどくさかったけど、無視するのは人間としてどうかと思っただけさ・・・」
そのとき、あの忌まわしい怪物の怒りの咆哮が響き渡った
まさか・・・俺を追って?
ゴウはすぐさま剣を探し、見つけると家から飛び出していった
扉を抜けたとたん、化け物の一体の速攻を受けたが、
剣の鞘で殴り返し、何とか助かった
だが痛みがひどい
長くは持たないな・・・
この家は例の森の中にあるようだ
三体いると思われる内一体を追い払ったが、
まだ二体いる
考える間に襲い来る攻撃をガードするたびに傷に響く
二体目もやっとの思いで追い払うと、ひときわ大きい三体目が襲い掛かってきた
剣でかぎ爪を抑えたが、パワー負けしている
ダメか・・・・!
そのとき、あの根暗な声が聞こえてきた
「どうして戦うの?
逃げればすむじゃないか・・・」
「こいつを無視すれば、お前はただじゃすまないだろう・・!」
ネガティーの声には哀れみが含まれている
・・・それと悲しみも
「なんで・・・なんで僕みたいなヤツをかばうんだ!?
誰も見向きもしない、醜いぼくなんかを・・・
君を殺そうとしたんだよ・・・!?」
ゴウは思った
こいつはこの性格のせいで誰にも振り向かれなかったんだな
レイドと出会う前の自分と重ねることで、
この男の気持ちをよく知ることができた
「たとえ・・・・たとえ俺を殺そうとしたとしても、
いずれ死ぬ運命だった俺を救ってくれた・・・
それに、人間であることに変わりはないだろう・・・
人は、時に過ちを犯す。だが、そのせいで人でなくなるわけではない
人である以上・・・・っ!」
まだだ・・・まだやられるわけにはっ
「人である以上・・・生きる資格はある・・・!」
だめだ・・・もう・・・限界―――
次の瞬間、何かがデカブツを切り裂き、
闇へと葬った
「君は・・・・お人よしだよ・・・」
ネガティーが何かを振り回している
あれは・・・チェーンアックス・・・!
チェーンアックスは、その名のとおり、
鎖の先に斧がついた強力な武器である
だが、その重量ゆえに、並みの人間には扱えないのである
そして、その特殊な斧を持った青年が、
再び俺を死の危険から救ってくれた
「こう見えても多少は鍛えてるんだよ・・・・」
すると、再びあの忌まわしい鳴き声がこだまし、
さらに多くの数がいることがわかった
さすがに持たない!
あきらめかけたとき、目のくらむ閃光が森を照らし、
相棒の姿が現れた
「ゴウ!」
「仲間が・・・来たようだね・・・」
ネガティーはそのまま家へと戻っていった
ゴウとレイドは閃光弾を利用して、
森からの脱出に成功した
「ッ・・・!ゴウ!!」
ギルドにつくやいなや、ユリアが駆けてきて、
救出した怪我人に跳びついた
「ゴウ・・・ッ! 無事で、よかった・・・・っ!」
おいおい、泣いてるぜ、こいつ
それもゴウの懐で・・・
レイドはひらめいた
そうか!そういうことか・・・・
彼は、しばらく二人きりにする為、
ゼラウスと少し話しに行った
第十七話へ続く・・・・・