GOD BLADE 第十一話〜新しい家〜

「なぜ黙っていた」

レイドはギルドの奥にあるベッドに寝かされていた
謎の生物に襲われたときの傷による出血で貧血になり、倒れたのだった

「いやあ・・・軽い傷だと思って油断してたわ」

レイドの表情にはいつものような余裕が見られるが、
顔色は悪かった

「悪い癖だ。個人の判断でどうにかなると思うんじゃない
 もっとも、今回は相手が少し厄介だったようだがな」

ゴウは脇に置かれている資料を手に取り、
目を通しながら説明を始めた

「おまえを襲ったのは、あの森の原生生物だ。
その生物は鋭いかぎ爪を持っていて、
そのツメには少量の毒がある」

「え・・・・?」

「安心しろ・・・とは言い切れないが、
 その毒は、触れた部分の神経を少しばかり麻痺させる働きがある
 それで痛みを弱く感じさせ、失血死したところを捕食・・・・・だそうだ
 そのせいで、おまえも傷が浅く感じたのだろう」

ゴウの隣に立っていたポジーも興味深げに話を聞いていた
ゴウは医療の知識、技術ともに優れており、
ともに行動できるととても心強い
無愛想な印象を受ける彼だが、
他人に対しては人一倍の気配りがある
ゴウの話が一区切りつくと、部屋に誰かが入ってきた
年齢はレイドたちとはあまり変わらないだろう
赤く染まった髪と、赤色をベースにしたコートに身を包んだ彼女は、
ゴウ達の顔を見るや、かしこまって礼をした

「祖父を助けてくれてありがと
 さすがに寿命かと思っちゃったけど、
 あなたたちのおかげで一命を取り留めたわ」

ゴウもその言葉に安心したようだった

「君は?」

「私はユリア・ファムノ
さっき助けてもらったゼラウス・ビドフィオの孫娘
そうそう、お礼に何か困ったことがあったら教えて?
できれば力になるから」

「・・・・・」

「あ、そうそう、恥ずかしい話なんだが、
俺たちここに来たばっかでさぁ、宿も金もねえのよ」

確かには恥ずかしい話だ
泊まるところがないのは困るばかりだった
すると彼女は少し考え込むと、
少し待つよう告げると、カウンターへ走っていった
戻ってくると、力のこもった声で言った

「いいわ、しばらくはここで暮らすといいよ
場所も余ってるし」

とは言っても、このギルドは小さく、
ここもベッドが二つあるだけだ

「場所って・・・・・どこに余って・・・」

ユリアは自慢げな笑みを浮かべ、
絵がかかった壁に歩み寄った
そして、美しい草原が描かれた絵を外した
すると、その中に一つのレバーがあった
それを引くと、なんと床が開き、階段が現れた

「うおおお!? すっげぇ!」

怪我を忘れて身を起こしたレイドをゴウは押さえつけ、
またベッドに寝かせた

「秘密の地下室。今は使ってないから、
ここで寝泊りすればいいわ」

ゴウもこれにはさすがに驚いたらしく、
しばらく地下への入り口を見つめていた

「本当にいいのか?」

「もちろん。じいちゃんの命の恩人だもの
この位どうってことないわ
それと、お金がほしかったら、
このギルドに来る依頼でも受ければいいわ
一応この部屋は秘密になってるから、
あなたたちはお客として扱わせてもらうしね」

「すまないな。おかげで何とか生きていけそうだ」

ゴウは一種の皮肉をこめていった
一人の中年位の男性が部屋の入り口から現れた
先ほど救出したギルドのマスター、ゼラウスだ

「見ず知らずの老人をの命を助けてくれた事は、
深く礼をさせてもらうよ」

本人は老人といったが、他から見れば、
五十代にも見えるくらいの若々しい力強さを湛えている
それに黒い肌から感じ取れる男の気迫は、年齢とは無関係だった

「まだ話したいことはあるけど、もう夜遅いしな
早速、地下室を使わせてもらうぜ」

「そうだな。詳しいことは、また明日にでも
それでは」

ゴウは一礼すると、荷物を持って地下室に降りていった
レイドも傷を気にしながらゴウに続いた

「んじゃ、俺も帰らせてもらいます」

ポジーも元気よく帰っていった
ゼラウスは一人、十年ほど前のことを思い出していた

(あのレイドという少年、まさか・・・・・・)


十二話に続く