東方異幻騒 TARGET:1 ルーミア

「幻想郷・・・ここならこの子も・・・」

子を抱えた狐の妖はすでに息絶えようとしていた
いや、正確に言えば封じられようとしている
しかしそれは妖怪にとっては死と同等・・・

「頼んだわよ・・・」

最後の力を振り絞り、時空のつなぎ目、スキマへと幼子を送った



妖怪、破楽修酔は木の上で空を眺めていた
もう秋も中頃に入り、山は目に痛いくらい紅葉で染まっている
こんなに完全な紅葉も珍しいわね・・・
修酔は起き上がった

「たまにはいたずらでもしかけてみようかしら」

彼女はふと笑った
いたずら好きなのは言うまでもない
それも妖精のようなレベルの低いものじゃない
私の能力・・・

五感を操る程度の能力

手始めに小さな妖怪でも驚かしてみようかな
修酔は上機嫌で飛び立った


夕方に差し掛かった森
日の光が絶妙な色を湛えている

「さて・・・お手ごろなのはいないかなー?」

修酔は木の上から辺りを見回した
木が多くて見晴らしは悪いが、いたずらを仕掛けるには好都合だ
少し待つと、黒い球体が漂っているのが目に入った
宵闇妖怪・・・決まりね
彼女はまずルーミアにどんな幻覚を見せるか考えた
あいつは食い意地を張っているようだし・・・
前は見えてなさそうだから、まずは「鼻」ね
修酔は右手を掲げた
修酔の頭から左右に下がっている珠が片方紅に発光し始めた
するとルーミアは動きを止めた

「ん? いいにおいー」

まずは成功ね
次はある程度誘導して「目」をいじって・・・

「こっちからするー」

ルーミアは思い通りの方向へと漂っていく
それと同時に展開していた闇も消えた
修酔は今度は左手を掲げた
もう片方の珠が蒼に発光する

「ふ!? あれは唐揚げの山!」

こんなのしか思いつかなかったけど十分みたいね
ターゲットは思い通りの位置に着いた
さて、仕上げね

「いただきまー・・・」

ルーミアは大口を開けて一口ですべて食べようとしているようだ
なら、「見えない」わよね
一度に操れる感覚は二つまで
ここで視覚を犠牲にすれば味覚と触覚で食べた気にさせられる

「すっ!」

勢い良く口を閉じたルーミアは顔をしかめた
さぁ、味はどうかしら?

「に・・・にが・・・」

さすがの宵闇妖怪もこれほどの苦味には耐えられないようだ
半泣きでふらふらとその辺を漂い始め、 あちこちの木にぶつかりながら姿を消した
うん、こんなもんね
肩慣らしにはちょうどよかったわ
さて・・・次は誰にしようかしら・・・

悪戯好きの妖怪、破楽 修酔
彼女は、幻想郷に来て間もない、不思議な妖怪である
そして、彼女自身は、自分が特殊であることに気付いていなかった



TARGET:1 ルーミア 完遂