GOD BLADE 第二十八話〜鋼の命〜

部屋中が騒音に包まれていた

あらゆる機器からアラームが鳴り響き、
狂った研究者は大声で笑い出し、
巨大な鋼鉄のボディがこの部屋全体を揺るがしている

「すばらしい・・・すばらしい!
 これが古代文明の力なのか!!」

白衣の狂人は両手を広げてロボットを見上げている
今にも踏み潰されそうな位置にいるのにもかかわらずその場を動こうとしない

「おい! 潰されたくなかったら逃げろ!!」

「無駄だ! あの類には死ぬまで声は届かん!」

ロイは一足先に出口で待機している
この巨体を前にして何とか冷静さを保とうと必死になっているのが表情から読み取れる

だがこいつを野放しにしたら村が・・・!

ロボットの両側に付いている巨大なアームが片方、前に向かって動き出した
こっちに来る!

「ちくしょう! ロケットランチャーなんか持ってねぇぞ!!」

「いいぞ・・・! 動く・・・動く・・・よく動く!!!
 これほどまでに素晴らしい技術が―――」

かすかに聞こえていた狂人の声が途切れた
押し潰されたか・・・もしくは瓦礫か何かが声を遮断したか・・・

「逃げるぞ! レイド!」

「ダメだ! ほっておいたら・・・」

「勝ち目はない! 諦めるんだ!!」

ゴウの言うことは正しい
退くしかないのか・・・!


『あんたら、人間か?』


諦めて背を向けた瞬間だった
覚えのある感覚・・・そうだ、ライの声と同じだ

「・・・なんだって?」

『人間かって聞いてんだよ。まぁ、これが聞こえてる時点で人間だろうけど』

いつの間にかロボは動きを止めている
まさか・・・この声はこいつか?

「・・・そうだよ、何でそんなこと聞くんだ?」

警戒を解かずに問いを返した
ロボは前に出していたアームをゆっくりと引っ込めて縮こまったような形になった

『んにゃ、この機能がちゃんと動作するかテストしたかったんでね』

こいつは機械のくせに驚くほどフランクだ
いや、そもそも人が乗っていないという保証はない
相手も人間かもしれない・・・

「おいレイド、この声・・・」

ゴウの戸惑った質問にゆっくりと頷く

「あぁ、こいつの声だ」

『ヤハリマチガッテハイナカッタヨウダナ』

『随分と驚きなさるな。今はこんなのも珍しい時代なのか?』

「そういや・・・古代の技術が何たらってそこの変人が言ってたが、
 ・・・お前は人間なのか?」

ロボが少し傾いた

『んー、難しい質問だな。生物的な観点から言わせてもらえばただの機械だが、
 開発上のコンセプトとその究極的な結論から言えば人間・・・かな』

「・・・さっぱりわからん」

今度は反対方向に傾く

『つまりはまぁ、「人」として作られたもの、って感じかな』

「結局は人工物なのか?」

『そうなるな』

相手はライと同じで脳波関係の会話手段を使っているようだ
でもライのものより随分と感じ取りやすい

『キイタコトガアル・・・ワレ我カミノイチゾクヲ摸シテツクラレタ機カイガソンザイシタト』

「・・・ライ、なんかお前のテレパシーが聞き取りやすくなった気がするんだが」

ロボが傾くのをやめ、ややこちらに近づいてきた

『おっ、その小動物みたいなのってもしかしてあのケージにいたのと同じヤツか?』

「なんだ、知り合いか?」

『いや、なんか昔同じような動物がアイツらに管理されてたからさ』

『一時期人間ニ捕獲サレテイタ仲間ガイタ。恐ラクソイツダロウ』

ライのテレパシーも明瞭になっていく
こいつの脳波の影響か?

『どうも俺らはその動物を参考に作られたらしい。この会話機能もその一つだな』

「ライ、それって何年前の話だ?」

『人間ノ年数トイウ概念デ言エバ、五千年ハ前ダナ』

五千年、文字通り、気の遠くなるような数字だ
しかし、そうするとこのマシーンはそれほど前の産物ということになる

五千年も前に、そんな技術が存在したのか?

『なるほどな、そう思うよな、普通は』

「!?」

コイツ・・・考えを読み取った・・・!?

『この会話は脳波をベースに成り立つんだ
 だからちょっと応用すれば考えだって読み取れる』

妙に理論的だが、納得はいく
問題は、その問いの答えだ

『どっちかって言うとこっちが聞きたいね
 俺等が埋まってる間に随分と退化したように見えるんだが・・・』

「退化?」

『そうさ、俺等が作られた頃はそれこそそれが可能な技術があったんだよ』

どういうことだ?

『そのままさ。五千年の間に何かしらあって今の状態に退行した、ってことだ』

『ソウカ・・・ヤハリ・・・』

ライがつぶやいた
そうか、コイツなら何か・・・

『ソモソモ“神”ノ使イデアル私達ガ、人間ニ捕ラワレ、利用サレタノガ原因ダロウ』

「なにがだ? この退行が、か?」

ライはなぜか話すのをためらっている・・・というより、困惑している?

『数千年前ニ、次元ヲ揺ルガス程ノ“天罰”ガ起コッタト聞イタコトガアル
 人類ハ辛ウジテ生キ延ビ、今ハ“神”ヲ崇メテ暮ラシテイル・・・』

「その“天罰”とやらに何かありそうだな」

「次元を揺るがす・・・」

しばらく黙っていたゴウがつぶやいた
ロイもいつの間にか近くに戻ってきている

「もし、もしもだ、その“天罰”が本当にそのままの事件であれば・・・」

「あれば?」

ゴウは妙に顔をしかめている
頭でも痛いかのようだ

「次元が・・・世界が・・・二つに分かれている・・・ことになる」

「なに?」

『なんでそうなる?』

今までの要素から導き出せる答えではない
ただ、なぜかゴウは明らかな確信とそれに対する戸惑いを覚えている

「わからん・・・だが・・・なぜか、そうとしか思えない・・・」

『・・・ゴウ、ソレハ間違イデハナイカモシレナイ』

「まじかっ」
『まじかっ』

マシンの声とレイドの声が重なった
意外と似たもの同士かもしれない

『コノマシンニハ確実ニ、人間ガ持ツベキデハナイ技術ガ使ワレテイル
 ツマリ、人ハ“罪”ヲ犯シタノダ』

「でもって、天罰か・・・」

『ソノ“天罰”ガ、何ヲ目的デ下サレタノカ・・・
 罪ヲ犯シタ人類ヲ、神ノ管轄カラ引キ剥ガスコトガ目的ダトシタラ?』

「それは・・・つまり?」

『その人類を見捨てる、ってことだな?』

『ソウダ、自ラノ知恵ヲ過信シスギタ人類ニ、神ノ存在ノ大キサヲ知ラシメルタメニ・・・』

だんだんややこしくなってきた
その罪を犯した人類とやらはまだ別世界に居るのか?

『・・・私モ聞イタ話ヲ元ニ推測シタダケダ
 マダ神ニ仕エル一族トシテハ幼イホウデナ・・・スマナイ』

「いや・・・だいぶ形にはなった・・・」

「神に仕える一族」・・・聞いたことのあるフレーズだったが、
今は、思い出せる余裕がなかった



第二十九話へ続く・・・・・